2022.06.04 (土) 17:00 –

バイオハック・アカデミー2022:トークと展示

Date

2022.06.04 (土)

Time

Talk 6/4 17:00~

Time

Exhibition: 6/4 13:00 - 21:00, 6/5 10:00 - 21:00

Place

FabCafe MTRL 2F

Place

https://zoom.bioclub.tokyo

BioHack Academyは3ヶ月の集中学習プログラムで、生物学とバイオテクノロジーの基礎、DIYバイオラボとオープンソースハードウェアの作り方、バイオマテリアルの扱い方、実験の設計と実施方法などを学ぶことに重点を置いています。

BioHack Academy(BHA)は、アムステルダム(オランダ)のWaag Societyを起点とし、世界中にローカルノードを持つ、グローバルな分散型コースです。

日本のBHA受講生7名は、熱心な学習経験を積むと同時に、進捗状況や作品について詳細なドキュメントを作成しました。このドキュメントの公開と共有により、次世代のBHA受講生、そしてバイオに興味を持つすべての人が、BHAで生まれた知識を基に、さらに発展させることができるようになります。

13:00 - 17:00 展覧会プレビュー

各生徒に30分のプレゼンテーションと質疑応答の時間があります。




槌屋洋亮 Fab Hack Microscope

デジタルファブリケーションの知識とスキルをフル稼働し、自宅にバイオハックのためのDIY機材を揃えるプロジェクトの一環として、今回は顕微鏡を制作しました。 Fab-Hack Microscopeは、ファブリケーション可能な自作の顕微鏡です。接眼webカメラを装着するためのアダプタ、サンプルとの焦点距離をコンピュータ制御する機構設計、自作を含め対物レンズを自在に変更可能な本体設計、Arduinoから顕微鏡をコントロールするために必要なパーツを接続可能な電子回路基板、PC上で焦点距離を制御しつつカメラ映像を表示するアプリなどを制作しました。これらの製作方法は全てオープンソースとして公開しています。

ファブラボ鎌倉ファブアカデミー・インストラクター。デジタルファブリケーションによるものづくりのスキルアップの一環でバイオハックアカデミーに参加。大学で教員を務めたのち、現在はファブアカデミーインストラクターをやりながら、都内の美術館を運営する財団にてIT関連の業務に従事。2022年4月より武蔵野大学大学院データサイエンス研究科後期博士課程(社会人)。一貫してオープンソース・ソフトウェア/ハードウェアや、インターネットに公開されているオープンデータの、社会的な課題解決へ向けた草の根レベルでの利活用を追求している。


桜木真理子:3R:遠心分離機のResearch/Replicate/Reconstruct

「RRR」は、遠心分離機の「調査(Research)・複製(Replicate)・再構築(Reconstruct)」をコンセプトとしたプロジェクトである。実験に不可欠なツールの一つ、遠心分離機。古い写真や製品カタログで遠心分離機の歴史を辿ってゆくと、電気を用いない手回し式の製品に出会い、元々遠心分離機は生乳を分離するために開発され、そのデザインがのちに科学界にも引き継がれることになったと知った。このクラシカルなデザインに魅了され、電気式・高速の遠心分離機が主流となった現代において古い遠心分離機を再登場させるべく、遠心分離機のDIYに(非常にアナログなやり方で)挑戦した。最終的にどれほどの速度で回せるようになったかは、ぜひ実物を手に取って確かめてほしい。

大阪大学人間科学研究科博士課程。専門は文化人類学。科学技術が人間の生に与える影響に関心を抱いている。2021年から自身の研究プロジェクトとして、東京都内を中心に日本国内のDIYバイオ運動に関する長期フィールドワークを行い、現代の市民科学の変化をDIYバイオの実践、特にその物質性の面から探求しようとしている。BHAには調査者兼参加者という立場で参加。富山育ち、京都在住。好物は刺身と茶碗蒸し。


長谷川志保 Yeast-Trope

バイオをめぐる表現はさまざまに解釈されるが、「圏(-sphere)」の問題として捉えていくことも可能だろうか?「Yeast-Trope」は、それらについて考えるための手がかりを探るプロジェクトの一環。19世紀から現代まで活用され続ける視覚装置「ソーマトロープ(Thaumatrope)」にイースト菌でイメージを転写する「Yeastogram」の手法を合わせた「Yeast-Trope」は、菌の成長という生物現象、回転という物理現象、そしてヒトの視覚機能で生じる残像という認知現象の重なりを示しながら、メタファーとしての「-sphere」を生み出し考察の端緒をつけていく。

専門は近現代芸術論(美術史、デザイン学)。特に近代以降の芸術表現とテクノロジー/サイエンスの交差について、映像文化、メディアアート、バイオアート/バイオデザインの観点から研究を進める。学芸員/研究員。


羽田光佐 Part of me?

本作品では大腸菌とのコミュニケーションを試みる。

わたしがBHAを通して面白さを感じたことの1つは、自分の体内や表面に大量の細菌が住んでいることだ。特に腸内のマイクロバイオームは、人の免疫系統に影響したり、脳とも情報をやりとりしていると言われている。

わたしの体内に暮らす彼らは、わたしと生死をともにしていることになる。そして彼らにとって、わたしがどう生きるかはきっと死活問題だ。

そんな彼らに、わたしの(実際は”わたしたち”の)個人的な質問をしてみたら面白いんじゃないかと考えた。理想はわたしの体内に本当にいる大腸菌に質問したいところだが、ここでは研究機関で一般的に利用されるK12株(もちろん無害)をわたしの大腸菌とみなして質問してみることにする。

東京都出身。現在NEET。大学卒業後は日系メーカーに勤務していたが、中国雲南省で地元の人と輪になって踊ったことで価値観が一変。自分の手で何か作りたいと思い、退職後コーディングを用いた作品制作を学ぶ。2022年デジタルハリウッドスクール インタラクティブデザインコース修了。生命の不思議さに触れられる予感がしたのでBHAに参加。最近面白かった本は『21世紀の恋愛 (作:リーヴ・ストロームクヴィスト)』。死ぬまでに叶えたいことは、ボノボとハグすること。


廣瀬 愛(Hirose Ai)Artificial salmon roe

 「Artificial salmon roe」は「人工イクラ」のことで、アルギン酸ナトリウムや乳酸カルシウムなどの食品添加物を用いて作られた「代替食品としてのイクラ」を指す。代替食品として「マーガリン」、「豆乳」、「カニカマ」などはポピュラーであるが、近年、細胞培養などいままでになかった新しい食品製造の手法が注目されている。歴史を紐解いてみると、日本では1960年代にフードテックの先駆けとして「石油タンパク」の研究が行われ、すでに当時、食における「楽しさ」の重要性が指摘されている。「人工イクラ」を通じて、食べることの楽しさを提案したい。

都内の企業で代替タンパクにも関わる仕事をしている会社員です。前職は図書館員で、学生時代も全く理系ではありませんでしたが、仕事上で専門用語などに触れるうち生命科学に興味を持つように。遅すぎると思った瞬間が一番早いスタート、ということでBHAに参加したあたりで緑内障が発覚し、治療中。生命と健康寿命について考える日々です。新潟県出身で、元旦のお雑煮は「ぜんざい風のあんこ餅」。